大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和34年(ワ)10174号 判決

判  決

東京都世田谷区世田谷一丁目三一六番地

原告

太田邦彦

右訴訟代理人弁護士

渡辺重視

東京都千代田区丸の内三丁目二番地

三菱東七号館三〇一号室

被告

北タクシー株式会社

右代表者代表取締役

井立田七右衛門

右訴訟代理人弁護士

秋山哲一

和田栄一

大原信一

右当事者間の昭和三四年(ワ)第一〇、一七四号株主総会決議取消請求事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

原告訴訟代理人は、「被告会社が昭和三四年一〇月一九日の臨時株主総会においてなした(1)井立田七右衛門、河井寛治、藁谷精一を取締役に、和田栄一、秋山哲一を監査役に選任する旨の決議及び(2)被告会社の商号「三井交通株式会社」を「北タクシー株式会社」に変更し、その本店所在地を東京都品川区から東京都千代田区に変更し、その発行する株式総数「十六万株」を「六十四万株」に変更する旨の決議は、これを取消す」との判決を求め、被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

第二  事実上の主張

一、請求原因

(一)  被告会社は昭和二六年一月二六日設立されたいわゆるタクシー業を主たる営業目的とする株式会社である。

(二)  原告は、昭和三四年四月五日成田義雄から被告会社の株式九一、〇〇〇株を譲受け、現在被告会社の株主である。

(三)  ところが被告会社の前代表取締役は、株主である原告に株主総会招集通知をなさず、昭和三四年一〇月一九日午前一〇時に株主総会を開催し、前記第一記載の各決議をなした。

(四)  かように右総会はその招集手続に瑕疵があるものであるから右決議の取消を求める。

二、請求原因に対する被告の答弁並びに抗弁

(一)  第一項を認める。

(二)  第二項を否認する。

(三)  第三項を認める。

(四)  第四項を争う。

(五)  (被告の抗弁)仮に原告がその主張のように被告会社の株式を譲り受けたとしても、原告はその後昭和三六年一二月二八日右株式全部を井立田七右衛門に譲渡した。よつて原告はもはや被告会社の株主ではないので、本件訴の当事者適格を欠くものというべきである。

三、被告の抗弁に対する原告の答弁

被告主張の抗弁事実を認める。

第三、証拠関係〈省略〉

理由

本件訴は株主総会の決議の取消を求めるものであるから、その訴の原告としては被告会社の株主或は取締役であることを要する。然しながら原告自ら認めるとおり、原告は昭和三六年一二月二八日全株式を井立田七右衛門に譲渡し、もはや被告会社の株主たる資格を失つたものであるから、(なお原告が被告会社の取締役であることについてはなんら主張立証がない。)原告は本件訴の当事者適格を欠くものというべきである。

よつて本件訴は不適法としてこれを却下し、訴訟費用は民事訴訟法第八九条により原告の負担とし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第八部

裁判長裁判官 伊 東 秀 郎

裁判官 白 川 芳 澄

裁判官 近 藤 和 義

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例